僕は、この人のことを結構誤解していたかもしれない、、、今更ながらなんだが、、、
一時期は、ハワイを象徴する曲ぐらいな勢いで評価されていた”Tiny Bubbles”、 “Pearly Shell”を歌い大ヒットさせたエンターテイナーではあるのだが、僕の中では、なんか、ワイキキの「バイショー(商売ねw)」シンガーという認識でしかなかったのだ。
ドン・ホーという人は、60年代、観光地としてメジャーになって、客船や飛行機での大量輸送で、中産階級も訪れやすい「常夏の島ハワイ」で、これまで映画、テレビ、ラジオによって作り上げられた仮想ヴァケーションのコンセプトから外れることなく、また、彼らの期待から足を踏み外すことのない予定調和な世界観をワイキキのホテルからお届けするサーヴィス精神に溢れるシンガーだと思いこんでいたのだ。(それはそれで、大きく間違った理解でもなかったのだが、、、)
そんな彼ではあるが、「一応」ベスト盤1枚ぐらいは手元においておくかと、Harry OwensとこのCDがセットになったザ・ハッパ・ハオレなセットを購入していた。そしてこれまでまともに聞くこともなく、年月が流れてしまっていた。
で、今回、こういうベタな、王道なものでも紹介するかな?と引っ張り出し、初めてちゃんと聞いてみた。
“Hawaiian Elvis”と呼ばれただけあって、そのサウンドは王道すぎるほど王道で、普通に良く出来た60年代のいわゆる「軽音楽」ポップス。程よくゴージャスで、程よくセンチメンタル。そして、ほんのりとトロピカルしている。
Hawaii Callsで「教育」されたハワイ・ファンにとっては、イメージ通りのハワイのシンガーだったのだろう。
1930年生まれのドン・ホーの音楽歴のスタートは、他のミュージシャンたちと比較すると、驚くほど遅い。
ホノルルのカカアコ・エリアで生まれたが、育ったのはカネオヘ。
カメハメハ・スクールズを卒業した後、UHで社会学の学位を取得するが、24歳のときに、そのまま、空軍に入隊し、カリフォルニアに配属される。その時代に、小さな楽器店で1台の電気キーボードを買い、それがすべての始まりになったという。
29歳で除隊すると、体調を崩していた母のために、カネオヘで母の愛称を店名にした「ハニーズ」というライヴもできるレストランを開業し、彼の妻や子供たちが中心となって経営したが、ローカルばかりか、カネオヘの海兵隊基地の隊員たちからも人気を得た。
1963年になると、ドンの人気は高まりすぎて、カネオヘのハニーズでは客を収容しきれない状況にまでなり、ワイキキに進出することとなった。そして、そのショーはさらに人気を集め、デューク・カハナモクがオーナーのライヴ・クラブ、「デュークス」でショーをするようになると、その評判は本土のレコード会社にまで届くようになった。
そして、1965年、彼が35歳のときに、リプリーズ・レコーズと契約を交わし、ワイキキでの熱狂ぶりを再現すべく制作されたライヴ・デビュー・アルバム”Don Ho Show”がリリースされる。本土での評判も上々で、ラスヴェガス、ニューヨークなどでもコンサートが開催されるまでになった。
そして、ついに1966年の秋になるとシングル”Tiny Bubbles”が発表され、ビルボード誌のポップとイージー・リスニングチャートの2部門にチャート・イン。同名のアルバムは、約1年間に亘ってビルボード・アルバムTOP200圏内にとどまり続けた。そうして、ハワイアン・エンターテインメントと言えばドン・ホー的な構図を築きあげ、その地位を確固たるものにした。
そういえば、2000年頭ぐらいまで、Don Ho’s Grillというこじんまりしたクラブがアロハタワー・マーケット・プレイスにあったのを思い出した。
話をこのアルバムに戻そう。1曲めは極めつけTiny Bubbles~Pearly Shellのメドレーからスタートするが、その後に続くのは、Taj Mahalの”Moonlight Lady”、The Pahinui Bros.の”Waimanalo Blues”、Sons Of HawaiiやBrothers Cazimero, IZなどでも知られる”Eku’u Morning Dew”, フラでおなじみ”Hukilau Song””Lovely Hula Hands” さらには、友人Kui Leeにも提供して、ハワイアンAORのハシリとも言われるヒット曲”I’ll Remenber You”までと、本当にバランス良く、ハワイらしさと、ポップスらしさを程よく取り入れ、それらの美しいメロディーを耳障りの良いライト・ミュージックなサウンドに載せたのだから幅広く世に受け入れられたのもうなずけるというもの。改めて、自分のお気に入りCDにランクイン。
ドン・ホーさん、永きに亘って、大変失礼いたしました〜
ちなみに、ドン・ホーさんは2007年5月5日にご逝去されている。
ジャケット違いで同コンテンツ