アルバムクレジットにあるAMYとはAmy Hanaialii Gilliomのこと。
今でこそ、ハワイを代表する女性歌手としてその名を知られているが、1995年のデビュー作が今ひとつインパクトに欠けたため、2年後に仕切り直して発表したのが、この”Hawaiian Tradition”。
このアルバムタイトルに加え、ライナーノーツには”her first truly Hawaiian album”という表現も見られ、彼女なりに”hawaiian”を十分に意識したコンセプトで制作に取り掛かったであろうことは想像に難くない。
自らが幼い頃から聴き親しんできたAunty Genoa Keawe, Lena Machado, Kealoha Kalamaといったレジェンドの女性ヴォーカリストたち。そして、最も近い場所で、最も影響を受けたであろう祖母Jennie Napua Hanaialii Wooddの伝統的ハワイアンファルセットのスタイルを重んじつつ、カリフォルニアで音楽理論を学んだ若い自らの感性で新たなハワイアンの創造に挑戦した決意のアルバムと言えるだろう。
13曲の収録曲中、ほとんどが彼女のアイデアによる「新作のハワイアン」だが、1曲目には彼女のリスペクトの証とも言える祖母Jennieによる”Haleiwa Hula”が収録され、この曲の大ヒットが、アルバムセールスを押し上げ、彼女の活動のマイルストーンともなった。
そして、そのアイデアをサウンド面で実現するパートナーとして選んだのがWillie Kこと、Willie Awihilima Khaialii。
この人選は「大正解」で、このアルバムを大ヒット作にして、大出世作へと導いてくれ、この後も長らく共同作業を続けることとなる。
音楽の先人たちもそうであったように、古き良きハワイアン・ミュージックの伝統文化にリスペクトを示しつつ、外部の新しい刺激的な音楽も積極的に取り入れ、新しい世代のハワイアンへと昇華させてきた。そのプロセスを、自らの実体験に基づいてある意味実験的に制作してみた作品と言えるのではないか?