Exotica ’90 (1990, 東芝EMI)

エキゾチカという音楽カテゴリー、もしくは、ジャンル名はマーティン・デニーの同名アルバムに由来する。
非西洋的な音楽要素を取り入れたイージーリスニング的オーケストラ音楽、またはジャズを指していて、基本的にはインストゥルメンタル演奏曲が多い。

南太平洋、アジア、ハワイなどのエッセンスに強いつながりを持ちながらも、絶妙な均衡を保ち、、”ほぼ” ハワイアンではない、ハパ・ハオレの流儀でホノルルのホテルラウンジやルアウ・ショー、TIKIクラブでビジター/ツーリスト向けに連日連夜演奏されるという現実逃避的リゾート文化から生まれた音楽がエキゾチカだ。
エキゾチカとは、南太平洋や東洋について西欧の人々がどのようにイメージしていたかを逆手に取ってブレンドし、マーティン・デニーが産み出したファンタジーであり、オセアニアの島々や ハワイなどを南国の楽園のイメージを絶妙のバランスで溶け込ませてみせた空想音楽なのだ。

本作は、東京とハワイ・ホノルルで録音された日本制作のアルバムで、プロデューサーはヤン富田さん。
YMOがデビューアルバムでマーティン・デニーの”FIRECRACKERS”を収録したのが1978年、それから12年後の企画盤。このときマーティンさん79歳、このアルバムの前作のリリースが1982年なので、8年ぶりの新譜リリースにして、最後の作品となる。
東京セッションではマーティン・デニーに影響を受けたミュージシャンが多数ハンドクラップやコーラスで参加している。プロデューサーのヤン富田さんはじめ、ジャケットの絵も描いている河村要助さん、あがた森魚さん、近田春夫さん、S-KENさん、ホッピー神山さん、いとうせいこうさん、中西俊夫さん、小西康陽さん、桑原茂一さんなどなど、この時代の東京カルチャーを担っていたアーティストたち総勢23名が「マーティンに一目会いたい」って感じで多数参加。細野晴臣さんも参加したかったそうですが、スケジュールで間に合わなかったとかなんとか。
因みに”Sake Rock”のギターは、あがた森魚さんで、シンセ・ベースが近田さん。
ホノルル・レコーディングには、Arthur Lyman, Augie Colonといった、往年のメンバーたちも勢揃いだ。

  1. TOKYO MELODY
  2. BURMA TRAIN
  3. BLUE PARADISE
  4. SAKE ROCK
  5. YELLOW BIRD
  6. CHOTTO MATTE KUDASAI
  7. JUNGLE FLOWER
  8. JUNGLE RIVER BOAT
  9. ROSE, ROSE, I LOVE YOU
  10. MAYUMI
  11. QUIET VILLAGE
  12. HAPPY TALK
  13. SAMBA DE CARNIVAL
  14. JUNE (WHEN LOVE WAS YOUNG)
  15. FIRECRACKERS
  16. FROM MAUI WITH LOVE
  17. RETURN TO PARADISE

“Quiet Village””Happy Talk”等名曲のかずかず、東京セッションのちょっと派手目な”FIRECRACKERS”、サンディがヴォーカルの”CHOTTO MATTE KUDASAI”等、曲の並びを見てもように、非常に興味深いセルフ・リメイク・ザ・ベストな内容となっている。