Hawaiian Paradise (1989, The Mountain Apple Company)

Harry Owensのヒット曲”Hawaiian Paradise”で幕を開けるこのアルバム”Hawaiian Paradise”は、こうしたハッパハオレ系の曲、トラディショナルな曲、リリウオカラニ女王の”Aloha ‘Oe”までトータルな意味で「ハワイアン」な楽曲を詰め込んだハワイアンミュージックのカタログのような1枚だが、それは、このアルバムを録音したかなり特殊な場所や手法にも、その要因があるのかもしれない。

Brothers Cazimeroと、デビュー以来、プロデューサーとして関わってきたJon De Meloはこれまでも創作意欲をインスパイアーするであろう環境にこだわってレコーディングしてきた。カウアイ島のノースショアの大きな美しい家屋でのレコーディングで”Ho’ala”は生まれたし、ハワイ島ワイメアにある牧場で”Hawaii In The Middle of the Sea”が制作された。

これまで、12年という活動の中で18枚ものアルバムを制作してきたBrothers Cazimeroが、1988年の春の時点では18ヶ月もレコーディングをしていないという、多少異例な状況にあったという。
そこで、Jon De Meloがカジメロ兄弟に提案したのは、ホノルルのダウンタウンでのレコーディングだった。
それも、スタジオではなく、1922年に建設され、ハワイの音楽シーンの歴史を象徴する劇場”Hawaii Theater”のステージを利用して、800席ある客席を無観客でレコーディングするというものだった。構造物として素晴らしい音響を持つシアターの天然の残響をフルに利用してアナログなエフェクトを効かせた演奏を、当時最先端の技術であったデジタル機材のDAT(Degital Audio Tape)というメディアを使ってレコーディングするという画期的なものだったのだ。

このような手法を駆使するということは、ほぼ一発録りを必要とされる。
そのため、10日間、毎日、各曲10〜12テイクレコーディングし録音、確認を繰り返してこの1枚が完成されたという。
つまり、このアルバムを聴くということは、40分弱にわたって、Brothers Cazimeroのライヴを、自分たちだけのためにHawaii Theaterの客席を貸し切って独占的に鑑賞すると同等の意味を持つ1枚であるということだ。