Hypnotique (1959/1994, Liberty/東芝EMI)

Exotica”90の好評を受けて、Martin Dennyの数多くのカタログが日本国内向けに初CDで復刻された。
そんな中の1枚、”Hypnotique”は、Martin Dennyの5作目のアルバムにして、”Exotica”または”Exotic Sound”の概念を、もう一歩進めて具現化した重要な1枚と言える。

または、アルバムタイトル”Hypnotique”の名の通り、そのサウンドが「催眠術的」に聞くものを時間的、空間的に超越した世界のどこかにありそうでない空間へと誘ってくれる。
鯉のぼりの泳ぐ、オリエンタルなラウンジに横たわるアンニュイでセクシーな女性は”Exotica Girl”のSandy Warner。
このヴィジュアルこそが催眠術にかかった我々が目にするエキゾチックな風景がその世界観を象徴している。

“Exotica”を語る際に忘れてはならないキーマンに、Les Baxterなる人物がいる。
1922年生まれと、年齢こそMartinより10歳若く、離れているが、彼はもともと、映画音楽の世界で活躍していた音楽家で、70作以上の作品を手がけた才能ある人物。
実は、Martinに先んじて実験的エキゾティック・サウンドのアルバム”Retual Of The Savage”を1954年に発表している。
このことによって、Martinがエキゾチックサウンドの確立に自信を深め、音楽的SFでヴァーチャルリアリティーな方向性の礎となったであろうことは想像に難くない。
そして、このアルバムに収録された楽曲たちは、”Quiet Village”などと共に、のちにMartinの重要なレパートリーの一部ともなっている。また、もう1人のエキゾティック・サウンドのキーマン、アーサー・ライマンのアルバム”Puka Shell”を1975年にプロデュースするなど幅広く活躍した。

↑MONOヴァージョンで11曲、後半はSTEREOヴァージョンで11曲のプチ贅沢な構成