The Art Of Solo ‘Ukulele (2002, National Organization for Traditional Arts Exchange)

2000年4月に開催されたホノルル・アカデミー・オヴ・アーツの”Na Mele O Hawaii”コンサート・シリーズというイヴェントで企画された「伴奏無しのウクレレ演奏を聞く」というライヴが大好評を博し、ローカルのパブリックTVや、ハワイアン航空の機内誌「ハナ・ホウ」でも取り上げられるなど、大きな反響を得た。結果、ハワイ州内各島で再演されたり、各地のUHアウトリーチ・カレッジでワークショップを含むツアーも実施された。
ある意味、この大成功した企画のご褒美、兼、記念碑的に制作された、このアルバムは、いかなる種類の伴奏もなしにウクレレに焦点を当てた最初のものとなり、 最小限に編集はされたが、スタジオ・ライブテイクで録音されたウクレレ・ヴァーチュオーゾ4人のパフォーマンスが収録されている。

もと、Don Hoのサポートバンド、The AliisのギタリストだったBenny Chongは、ウクレレ・プレイヤーとしては、このアルバムで「デビュー」を飾った。彼のウクレレのプレイ・スタイルは、50年代のLyle Ritszのウクレレによるジャズへのアプローチに大きく影響を受けたもの。このアルバムでの3曲も、そういった選曲となっている。
Bennyとは長年に渡る友人のByron YasuiはUHで、音楽理論や作曲法などを教える一方、ホノルル・シンフォニーに各種弦楽器奏者として参加したり、ジャズのベースプレイヤーとしても活動を続けている。このアルバムでは、「ブルー・ハワイ」「ワイキキ」「ソフィスティケイテッド・フラ」といったハッパ・ハオレな選曲を見事なコードワークと絶妙なストラミングで聞かせてくれる。
これまで、いかなるレコーディングのオファーも断り続けてきたというGordon Markは、このアルバムで自身がこれまで培ってきたクラシックベースのウクレレ・スタイルを初めて披露している。今回選んだ素材も、バッハやチャイコフスキーの作品ではあるが、ウクレレという限られた音域しか持たない楽器でどう表現するか?といったヴォイシングの妙も聞き所。
そして、4人目は、ダントツに年の若いヴァーチュオーゾ、Jake Shimabukuro。このアルバムのレコーディング時点ではコロン解散直後かと思われる。ソロ・デビューへ向けての準備期間としては、なかなかいいタイミングでの参加だったのかもしれない。ライヴでのハナ・ホウ(アンコール)の定番曲だったCrazy Gを、ライヴ通りのコールを交えて演奏してみたり、後に、「Gentry Weeps」でつながりを深めるジョージ・ハリソンのSomethingのカヴァー、そして「禁じられた遊び」のテーマなど、持ち前の幅広いプレイスタイルを聞かせてくれる。

何れにせよ、4人4様の音色、プレイスタイル、テクニック、、、ウクレレという小さな楽器が秘める、大きな可能性を改めて感じずにはいられない貴重な1枚と言える。

  1. Ku’u Ipo I Ka He’e Pue One / Gordon Mark
  2. God Bless America / Jake Shimabukuro
  3. The Way You Look Tonight / Benny Chong
  4. Blue Hawai`i / Byron Yasui]
  5. Crazy G (in F) / Jake Shimabukuro
  6. Love Theme from “Romeo & Juliet” / Gordon Mark
  7. I’ll Take Romance / Benny Chong
  8. Ku’u Pua Mae’ole / Byron Yasui
  9. Something / Jake Shimabukuro
  10. Waikiki / Byron Yasui
  11. Jesu, Joy of Man’s Desiring / Gordon Mark
  12. Romance in G minor / Jake Shimabukuro
  13. All the Things You Are / Benny Chong
  14. March Medley / Byron Yasui
  15. Sophisticated Hula / Byron Yasui
  16. Hi`lawe / Blane Kanno, Gordon Mark