ノール・オキモト(ノエルと思っている人が多いが、正しくはノールと発音する)はハワイの音楽界で、もっとも有名なドラム奏者だ。実際には、パーカッショニストとしてハワイ大学で正式な学位を受けているのでヴィブラフォン、シロフォン、マリンバ、ピアノなどにも精通していて、2019年いっぱいまでは、ロイヤル・ハワイアン・バンドのパーカッション・セクションのリーダーとして31年もの間活動していたが、同時に、数え切れないほどのアーティストのレコーディングやライヴのサポートでアイランド・サウンドを支えてきた人物。
彼の技術と人望の高さは、世界レベルでの共演者を並べるだけでもうかがい知ることができるだろう。その共演者とは、フレディー・ハバード、スタン・ゲッツ、アーニー・ワッツ、バーニー・ケッセル、ウィントン・マルサリス、ラリー・コリエルといったジャズ勢は勿論のこと、ケニー・ロギンス、マイケル・マクドナルド、ディオンヌ・ワーウィック、パティ・ペイジなどなど、颯爽たる顔ぶれだ。勿論、地元ハワイでの共演者も、ドン・ホー、オータサン、ダニー・カレイキニそして、ジェイク・シマブクロと幅広い。
ノールは、1959年ホノルル生まれで、同じくドラマーだったジョージ・オキモトを父として育った。ワイキキなどでの父のバンドの仕事に同行しては、幼い頃から経験を積んできていたのだが、年齢から様々な制限を受けることも多く、お酒などの提供される場所でも正式に演奏できるよう11歳にして、ミュージシャン・ユニオンに最年少登録をしたというエピソードも残っている。1988年からは、先にも書いた歴史あるロイヤル・ハワイアン・バンドでの活動を始めたが、2019年12月1日のカピオラニ公園のバンドスタンドでの演奏をもって、61歳にして、51年間のドラマー生活にひと区切りをつけた。
このアルバム「オハナ」は、2004年にピアニストの小曽根真と、トランペッターのタイガー大越らと共に制作され、世界的に有名なジャズ専門誌ダウン・ビート・マガジンで5つ星のレビューを獲得したほか、ハワイアン・ミュージック・アウォーズ、ナ・ホク・ハノハノ・アワーズでもジャズ・アルバム・オヴ・ジ・イヤーを獲得している。
収録曲は、すべてノールの作曲。ピアノやヴァイブの達者な腕前も随所に聞くことができる。知名度では小曽根氏や大越氏には及ばないので、あまり取り沙汰されることはないのだが、ほぼ全曲でタイトなプレイを聞かせてくれる「相棒」ベース・プレイヤー、ディーン・タバの仕事ぶりもなかなかのもの。
このアルバムのプロデューサーで、レーベル・オーナーなのは、あのロイ・サクマ氏で、先の紹介した“JOY”のアルバムでもノールのドラムスを聞くことができる。
- Siete Noches
- Cinder Cone
- Ohana
- You Buggah
- Liane
- Myocholonic Jerk
- Ehukai
- Tropi Jazz
- San Francisco Rain
- Pop’s Bop
- Displaced
- Out Take