Nau Oe (2003, Aha Punana Leo)

カイナニ・カハウナエレは、カウアイ島アナホラ出身。
ハワイ大学ヒロ校のハワイアン・ランゲージの講師、妻であり3人の子の母親、そしてミュージシャンとして、ハワイの言語と文化の活性化を人生のあらゆる側面に織り込んで活動している。
ちなみに夫はハワイ文化活動家として有名なハレアロハ・アイアウ氏。

カイナニのファミリーは4世代続く音楽一家で、幼い頃からその音楽的才能が輝いていたそう。
幼少時代はカウアイ島で過ごし、その後ハワイ大学ヒロ校に進学し学士号を取得。
ハワイ大学在学中に、このデビューアルバム「ナウ・オエ」をリリース。
いきなり翌2004年のナ・ホク・ハノハノ・アワードで「モスト・プロミッシング・アーティスト」「フィーメール・ヴォーカリスト・オヴ・ジ・イヤー」「ハワイアン・ラングィッジ・パフォーマンス・オヴ・ジ・イヤー」の3部門を獲得する。

特にハワイアン・ミュージックの作詞作曲と詩(チャントやオリなど)を通して、ハワイ語を永続させ活性化させるアハ・プナナ・レオというカリキュラムに積極的に参加する一方、映画、ドキュメンタリー、テレビ番組にも楽曲を提供している才能あるパフォーマー。また、彼女はハワイ語の作詞家としてナ・レオに歌詞を提供しているのは知る人ぞ知るな話。ケアリイ・レイシェルのアルバム「カワイオカレナ」の「ザ・プロミス」ではデュエットの歌声を聞くこともできる。

彼女はハワイの伝統や文化を伝えるため、世界中で演奏し、ハワイで才能のあるミュージシャンたちとも共演し、フラダンサーたちに同行して、数え切れないほどの学校やコミュニティのイベントで子供から老人たちまでに啓蒙活動を続けている。

と、こんな風に紹介すると、彼女はガチガチのネイティヴ・ハワイアン活動家のように見えるかもしれないが、このアルバムから聞こえてくる演奏や歌声は、どこか力が抜けていて、レイドバックしたものだ。
勿論、ハワイ語で自らのアイデンティティーを主張する曲や伝統的なハワイアンなサウンドの曲もあるのだが、例えば、英語で歌われる#3の「ソー・デリシャス」は、テレサ・ブライトに通じるようなボサノヴァチックなソフトな一曲だし、#7の「アンクルズ・ソング」も英語の歌詞に、フォーキーなサウンドでふんわりと歌ってくれる。#11「オンリー・トゥー・ユー」もソフト&メローなアコースティック・ナンバー、といった具合で絶妙なさじ加減の曲の配置具合だ。
現状の日常を俯瞰で再確認して、等身大の彼女の感覚をはめ込んだのではないか?と思える、そんな1枚になっている。

彼女は現在新作を制作中とか。才能豊かなカイナニ・カハウナエレの活躍には今後も期待がつのる。