リリウオカラニ女王が王位を退き、ドールが暫定政府の樹立後、ハワイ共和国が誕生した翌年。
リウオカラニが逮捕され、イオラニ宮殿に幽閉された1895年に、この本の著者、メアリー・カヴェナ・プクイはハワイ島カウに生まれた。この本は、彼女の生誕100周年を記念して発刊されたとのクレジットが入っている。
ハワイ諸島が、急激に西洋化されてゆく激動の状況下で、ハワイ人である母と、マサチューセッツ州からやってきた父のもと、敢えてバイ・リンガル、そして、バイ・カルチュラルに育てられたというメアリー。
また、プリンセス・エマの宮廷でフラダンサーをしていたという祖母ポアイは、メアリーが生まれてからの6年間、ハナイ(養女)として育てながら、伝統的なハワイの知識、習慣、信念(無数の詠唱、フラ、ことわざ、そして物語など)を丁寧に伝え、幼いメアリーに、彼女のハワイの遺産に対する生涯の情熱を植え付けた。
この本に収められた44の伝承民話のいくつかの物語は、メアリーが祖母から直接聞いたものだという。
メアリーは生涯を通じて、ハワイの知識とともに生き、常に求められているクム(情報源、教師)であり、熱心なストーリーテリングの実践者でもあった。
ここに収録された民間伝承は、メアリー・カヴェナ・プクイがローラ・C・S・グリーンと共に収集、翻訳、注釈を付けた。
これらの民話の多くは、オリジナルのハワイ語と英語の翻訳の両方で提示され、神々と精神世界についての話、首長(チーフ)の話、そして一般の住民たちの話の順で整理されていて、伝統的なフラのプレゼンテーションの順序を反映したものとなっている。
これらの、消えゆく文化と場所の一部でもあるモオレロ(逸話・伝説)は、人々を楽しませるのみならず、ハワイの豊かな文化的伝統をより深く理解する機会も提供し、後世に継承してゆく役割も担っている。
この本は、アロハ・シャツのデザインでも著名なシグ・ゼーンによる、メアリーの故郷であるハワイ島カウに自生する植物のオリジナルのイラストが随所にはめ込まれていて、独特の世界観を醸し出している。
※表示されている表紙画像は違うが中身は同じもののようだ