ハワイアン・キルトは、1800年代にキリスト教宣教師の妻たちによって、ハワイに持ち込まれたパッチワーク・キルトの手法が、ハワイ独自の素材や南国ならではのモチーフの選び方で発展し、さらには、それぞれのデザインは、それぞれの家庭の歴史や出来事のエピソードを投影したものとなっていて、もはや、スラック・キー・ギターなどと肩を並べるハワイの固有の伝統文化の一つとなっている。
この本の著者である、ザ・ポアカラニ・ファミリーと生徒たちは、ハワイの宝とも言えるこの芸術的遺産を維持・継続するため、貴重なキルトを公開し、個人的なストーリーを共有しようとしている。
ザ・ポアカラニ・キルティング・ファミリーは毎週、土曜日にイオラニ宮殿で、ハワイの伝統芸術であるハワイアン・キルトのクラスを開催していた。(現在は、COVID19の為休止中)
マスター・キルターだった祖母のキャロライン・コレアに育てられた、マルシア・ポアカラニ・セラオ。
ポアカラニは生まれながらにして左腕しかなかったが、その左腕一本で見事なハワイアンキルトを作りあげたという。キャロラインが亡くなる時にハワイアンキルトのパターンのデザインをポアカラニに譲りその後、パートナーのジョンが引き継ぎ、発展させている。
ジョンは元HPD(ホノルル警察)だったが、リタイアして妻ポアカラニのキルティングの事業を手伝う決意をし、ハワイの植物、文化、歴史に基づいた独自のキルトパターンを1000以上もデザインし、トップデザイナーの地位についた。
ジョンとポアカラニはハワイ州内のみならず、国内外でワークショップ、セミナー、展示会を開催している。
この本の、前半はハワイアン・キルトの作品を紹介、後半は作り方とパターンを紹介している。
ジョンのデザインした100を超えるアイランド・スタイルのデザインとキルトの技術で埋め尽くされ、ファミリーのメンバーたちが実際に作品として仕上げたものが写真で紹介されている。
パラパラと見ていると、キルターの多くが日本人であることに気づき圧倒される。
作品のいくつかには一部を拡大した写真が載っているので、細部まで詳しくキルティングのデザインやテクニックを見ることができる。
後半には、リバース・デザインのハワイアン・キルトのパターンが載っていて、転写すれば実際にそのキルトを自作することができるようになっている。
キルトに興味のある方々にとっては、十分にもとが取れるお得な一冊なのだろう。